Route 66

犬屋

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 熱病に冒されて、救急車に運ばれ点滴を打った。搬送途中の治療室の中、走馬灯のようなものが駆けめぐり「死ぬってこういうことなんだ」と少し解った。僕は扁桃腺を切除していて、こんな風にやられるのは久々で辛かったけどそれはそれで面白かった。氷枕が欲しいですと言いたかったけれど、プライドが許せずに天井から垂れ下がったナースコールをそこはかとなく無視した。


 熱が上がり始めた頃、小学校の親友と再会する夢を見た。あっけらかんと晴れた街路に彼はとてもにやにやと歩み寄ってはまた昔みたいに話をして笑った。なぜか僕はそいつとバイクに乗って見覚えのあるバス停までとばした。そこには中学校のクラスメイトが輪になって話していた。そいつも顔見知りであったので2人で入った。楽しい空間の中には晦い話もあったが、頑張れよという一言と、慰めを貰ってそこを別れた。同じ時間を過ごしてきた人間を見渡してみると僕はどうにも沢山の人に嫌われてきたなと思う。それには多分自意識過剰的なものも含まれているだろうが、僕は十代のうちにどれだけの人間に嫌われればいいんだろうと思ってしまう。誓い合った約束も、愛も怠惰も果たして本当にあったんだろうか。こういうふうに道を別れた人たちのことを、僕は未だに夢に見る。

 

 

それからも夢は続いた。

 

 場面が変わり、真っ白な無菌室みたいな場所で僕は寝具の中にいて、あやふやに暈けた誰かが囲んでいる。それ以外そこには何にもなく、悲哀しか部屋は覚えていなかった。僕は多分人間が恐かったので嘘をついた。春の終りに花びらが落ちるような地獄に真っ逆様になる感覚だけがいつも隣にいた。決まって何かを言葉にできないままいなくなった。ただ仲良くなりたいだけだった。助けてって言えなかった。