Route 66

犬屋

デオキシリボ核酸

 昔から物覚えが悪かった。多分中学時代の同級生全員の名前は忘れているし、今日の日付もつまびらかでないし、昨日胃に何を入れたのかも定かではない。最近ではそれが激化の一途を辿り、三分前に言われた事も頭の中に残っていないような事態が頻発している。しょうがないので油性ペンを使ってタトゥーみたいに事案を掌に書くんだけど、これがまた落ちにくい。このまま行くと僕は6ix9ineみたいになってしまうんじゃないか?不安だ。

‪ あんまり記憶力が悪いせいか人生で1回も過去に戻りたいと思ったことがなく、なんとなく生きて来た気がする。能天気な奴だと思ってくれて結構だが、思慮浅いと言われるのは心外かもしれない。‬心が体を動かすエンジンだとすると、記憶は基盤裏に隠れた歯車みたいなもので、‪確かに動いているという証を針音で確かめられる時計のようなものが人生だと思う。多分それらは働き続け、果てには誰かの心の中でさえ回り続けるんだろう。僕らが心配するよりはきっと一生は有限じゃないし、もっと無意味なものだ。‬最近、曲を二つも出した。休暇を制作に費やすことの良し悪しを僕は知らないが、私の音楽をきっかけに私の全く知らない歯車が捻り出した時計の盤面を感想や絵に起こして貰える事はこの上ない幸福だと思う。ただもし、僕に伝えたいような事柄があるのなら掌に書いて欲しい。タトゥーみたいにして。‬