Route 66

犬屋

メーテル

 最近、物忘れが凄い。というのも教科書を家に忘れるとか生温いもんではなく、数分前の記憶が飛んでしまうことが多々ある。コンビニで買ったサンドウィッチを食べることを忘れてしまったり、さっき食べたサンドウィッチの具がなんだったか20分悶えたりしている。まあ精神病か霊の類のどちらかであろう、塩でもまいておく。 

 記憶。人間の脳という部位は残酷で、重要な事ほど忘れ、忘れたいと思う記憶ほど鮮明に脳裏にへばりつく。私が初恋を忘れられないのは、きっと現時点の身体において愛という燃料が枯渇しているからである…とか思ったり。解っているのに忘れられないし、覚えているのに忘れてしまう。「いっそ夢だったら」と、何度頭蓋骨をぶん殴れば醒めるだろうか。人生は度数がめちゃくちゃ高いアルコールみたいなもので、飲み込んでしまったが最後、醒める時は眼前に電車が迫る線路の上だ。

人間なんてものはフラフラしながら人生を衒っているだけだ。だから支えあわないといけないし、それらを正当化しないといけない。揉みくちゃにされながら、人間にサンドウィッチされながら、自分が何の具なのか確かめる。そして僕はそれをすぐ忘れてしまうんだけど。他人と関わるたび「僕はいなくなった方が良い人間なのではないか」と思ってしまうのは、ずっとずっと昔から変わらない。生まれてきてごめんなさい、生まれてきてごめんなさい。と心の奥底で酩酊しているのだ。酒のせいにして今日は寝床につくとする。おやすみなさい。